Yuya Sugimoto

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Drawing / Graphic design / Manga / Photo / Store

=グラフィックデザイン



Forced



こじつけ:

ZINE
Non-commercial work
2022.09











明日はどんな天気になるだろう


毎日いろいろな種類の考え事に追われて忙しいというのは錯覚で、 僕は一日中天気のことばかり考えているようだ。 起きてまず口にする飲み物、 会社に着て行く服、 移動手段、 持ち物、 昼ごはん、 散歩のルート、 明日の予定(今日は金曜日だ)・・・。 自分の気分で判断してると思っても、 その気分さえ天気に左右されてしまうわけだから基本的にはずっと天気に悩む生活を送っている。 自然を無視してこの世界を生き抜くことは不可能なので当然だが、 日常のありとあらゆることに天気が関与してくる事実に改めて驚いた。 季節の変化を楽しむフリをして洋服を買い替え、 いつが旬かもわからない食べ物を繁華街へ食べに向かう僕たちの生活には、 思いのほか天気が影響する。 大雨が理由なら遅刻が許される世の中なのだから、 いっそのことどんな出来事も天気のせいにしてしまえるのではないだろうか。 論理的な説明より饒舌な主張より、 僕は「天気」という理由にどことなく説得力を感じてしまう。 明日はどんな天気になるだろう。


ゾットする


大人になれば怖いものがだんだんなくなっていくし、 ある程度のことは我慢できるようになると思っていた。 でもどうやら違った。 僕は飛行機が怖い。 できることなら乗らないで一生を終えたい。 30歳を目前にはじめて国際線に乗ったときは本当に衝撃だった。 機体によるのかもしれないが、 滑走路から飛び立つまでの間にあんな轟音が鳴り響くなんて思いもしなかった。 振動もものすごい。 これは間違いなく異常事態だと周りを見渡しても誰も焦っていない。 みんな飛行機に慣れすぎて感覚が麻痺しているんじゃないかと思った。 どう考えても飛行機は怖すぎる。 離陸前に寝てしまいたくても緊張で眠れないし、 読もうと思って準備した本はほとんど頭に入らない。 もちろん映画に集中できるわけもない。 おまけにお腹の弱い僕は機内食を全力で楽しめない。 万が一お腹を壊してトイレにいる間、 強風が吹いて飛行機が揺れたらどうしよう。 そう考えると自然と少食になってしまう。 何回も乗れば慣れるよと妻は言うが、 今のところその気配はない。 大人は大変だ。 飛行機並みの試練がこの先も待っているのかと思うとゾッとする。


相当心細かったから


あまりにも風が強いと「ビュービュー」「ゴーゴー」という音しか聞こえなくなって、 その代わり頭の中のひとりごとや心臓の鼓動はいつもよりよく聞こえてくる気がする。 髪の毛はオールバックになるし目にはゴミが入るけど、 体を預けたくなるほど勢いよく吹く風の中をゆっくり進んで行くのは気持ちが良い。 人間でさえ苦労するそんな悪天の日、 小さな虫はどこか遠くまで飛ばされていってしまうのだろうか。 例えば丸まったダンゴムシは風に飛ばされて隣町まで転がっていってしまうのだろうか。 もしそんなことが起きたら可愛そうだ。 電車で寝過ごしてしまい、 馴染みのない駅で目が覚めたときは相当心細かったから。

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